新聞各社の年金制度改革案の政策シミュレーション-年金制度改革案の政策評価と修正の提案-
年金制度改革は、社会保障と税の一体改革を進めていく上で、最も重要な柱である。2011 年2 月26日に開催された社会保障改革に関する集中検討会議では、年金制度改革案を提言する新聞社からヒアリングが行われた。本稿では、これらの提案のうち、読売新聞社、日本経済新聞社及び産経新聞社の提案について、マイクロシミュレーションモデルINAHSIM を用いた政策シミュレーションを実施し、①貧困高齢者への政策効果、②現行制度と比較した時の追加費用、③過去の保険料納付実績との関係を考慮した公平性の観点から、評価・分析を行った。この結果、いずれの新聞社の改革案も現行制度と比べて高齢者の防貧・救貧効果は大きいものの、読売新聞案と産経新聞案は公平性に問題があること、日経新聞案は、移行に長期間を要するために、防貧・救貧効果がすぐに現れないことが問題点として明らかとなった。そこで、各社のこれらの問題点を改善するために、読売新聞案と産経新聞案については、最低保障年金等の対象を75 歳以上に限定する方式、日経新聞案については、75 歳以上の高齢者にはすぐに税方式による給付を導入する方式を修正案として示し、同様の政策シミュレーションを実施した。修正後の改革案は、問題点が解消されただけでなく、当初案と同様、高齢者の防貧・救貧効果は大きく、追加費用も小さいことから、財政的にも実現可能であることが分かった。新聞各社の改革提案とその修正案は、いずれも有力なものであり、本稿の政策シミュレーションで得られたエビデンスと合わせて、社会保障と税の一体改革に関する論議が進められることが望まれる。
Year of publication: |
2011-06
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Authors: | 稲垣, 誠一 |
Institutions: | Center for Intergenerational Studies, Institute of Economic Research |
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