現在価値法による企業価値の推定とＶＢＭ (Estimating Corporate Value Based on a Present Value Method and VBM)

Japanese Abstract:「株主の富の最大化（shareholder wealth maximization）」と整合する業績指標、すなわち、経営者が株主と「目標の一致（goal congruence）」をはかれる業績指標(performance metrics)として、「企業価値(corporate value)」や「株主価値(shareholder value)」を導入する試みが先進的企業を中心に、近年、活発化している。関心の高まりに比例して解説書の出版や論文発表が盛んである。しかし、当該領域のコンセプトは、伝統的な会計学の理論に加え、corporate financeの理論を取り入れており、理解が容易でない。そこで、本稿では、米国で展開されてきた理論のエッセンスを整理し、かつ、インプリメンテーション上の問題に対する解答を探る。構成は次の通りである。企業価値というコンセプトを解明する第１節では、アナリストや機関投資家等の外部関係者が注目している、現在価値法に基づく企業価値の理論的推定法である、①割引キャッシュ・フロー・モデルと、②経済的付加価値モデルを検討する。加えて、会計数値に現在価値法を適用して「株主資本価値」を推定する、③超過利益アプローチも取り上げる。第２節では、企業価値や株主資本価値のモデルが用いる変数を内部管理のための業績指標に展開し、株主と経営者の「目標の一致」を促進するＶＢＭの構造を、株主価値ネットワーク(shareholder value network)ならびにバランスト・スコアカード(balanced scorcards)に探求する。第３節は、ＶＢＭに対する経営者のコミットメントを高める報酬システムがどうあるべきかについての規範的見解を表明すると共に、ＶＢＭの現況をHOYA等の事例を踏まえ紹介する。